メーカー別で“歌ネット・ルーキー”を調べてみると、36人中、およそ1/4が、ユニバーサルミュージックでトップ、同社並みにCDシェアの高いSMEやエイベックスと比べても明らかに多い。


歌ネット・ルーキー”の中から、CDアルバムのオリコンTOP10入りした アーティスト数は、36組中24組と意外と多い。(キラ☆歌発掘隊・歌ネット・ルーキー)
“歌ネット・ルーキー”数でトップのユニバーサルミュージックでは、全アーティストがアルバム・ブレイクに繋がっているということ。しかも、全9組中、7組が同一レーベル、ユニバーサルシグマに所属しているということだ。同レーベルでは、徳永英明や松田聖子、DREAMS COME TRUEなどのベテラン勢もアーティスト別の検索でほぼ毎月TOP100入りしており、まさに若手からベテランまで歌詞が支持されたアーティストが多数所属している。偏りのないラインナップが、より普遍的なメッセージソングを生み出そうとするアーティストやスタッフのモチベーションに繋がっているのかもしれない。
KARAの「ジェットコースターラブ」(3位)、「ミスター」(11位)、「GO GO サマー!」(20位)の3曲をはじめ、TEEの「ベイビー・アイラブユー」(12位)、back numberの「花束」(13位)と合計5曲がランクイン。2012年の上半期でもナオト・インティライミ「君に逢いたかった」(12位)とMs.OOJA「Be・・・」(28位)、そして昨年に続いてback number「花束」(23位)が上位入りし、相変わらず同レーベルの歌詞力は強い。このことについて、同社で制作を統括しているマネージング・ディレクター代行の中村 卓氏からコメントをいただいた。
   うちの制作チームは、歌詞をとても重視していますし、言葉へのこだわりが異常に強いですね。例えばPVには歌詞テロップを入れたり、歌詞サイトに早めに内容を送ったりしています。また、新しく見つけていくアーティストも、歌詞が強いかどうかを見極めますね。シグマの制作チームの強みのひとつは、歌詞へのこだわりだと思います。
今は、通勤や通学途中にイヤフォンで音楽を聴くことが多くなっていますが、完全に自分だけの世界に入るので、より言葉が大事だと思うんです。ですから、聴く人が感情移入できる、リアルに共感できる歌詞を、制作段階で常に意識しています。
 
中村 卓 氏  KARAの日本デビューのケースをお話ししますね。従来のK-POPはサウンド感が一番の魅力だったと思うんです。そのせいか、顕著に音楽配信のチャートが弱くて、「どうしたらK-POPのガールズグループが受け入れられるか?」「音楽配信を強くするにはどうしたら良いか?」ということを考えた時に、歌詞を重視することだろうと思ったんです。それで、レコーディングでも、日本語詞の聴き取り易さと内容がしっかり伝わる事を最も意識しました。

KARAの場合、まずその曲のコンセプトを決めます。1曲に対して最低50パターン以上の歌詞を集めて、「ストーリー」「メロディへの言葉のはまり」「言葉のインパクト」「キャッチーさ」「歌い心地」などで絞りこんでいきます。
   他のアーティストでも同じことが言えます。TEEの「すごく好きなんだけど、あなたの左手の薬指には誰かの影がある…」という言い方や、Julietの「女の子の恋愛は全部上書きしていくことが出来るけど、なんで男の恋愛は上書きできないんだろう?」といったような、今の時代の言葉を使っての表現、さらにナオト・インティライミの「僕の左側をいつも歩きたがる君の右手を、僕の左手でぎゅっとつかんで離さない…」なんて歌詞は、めちゃめちゃリアルですよね。Ms.OOJAの「もしもこの未来にあなたがいるのなら思い描いた景色も変わるのかな…」という部分で涙する女性も多いですね  
   
   前者は、聴く人が「ああ、こういうことあった…」とか「コレ…あたしのこと歌ってくれてる…」みたいなリアルな感情ですね。つまり、「共感」の下にあるのは「物語」であり「感動」であり、「喜び」「悲しみ」「苦しみ」であり、それらを全て合わせたようなもの。また、後者は、「言葉のキャッチーさ」や「言葉のはまり」「タイトルの強さ」など。そして、この2つの軸がはまった時に、素晴らしい歌詞となり、曲となり、それが最終的に皆さんに受け入れられるのだと思います。  
(ユニバーサル シグマ / マネージング・ディレクター代行 兼 制作本部 本部長 兼 第1制作部 部長 中村 卓 氏 談)

【中村氏のコメントに登場する歌詞の原文】
TEE 『ベイビー・アイラブユー
「君の小指に運ぶ風 薬指に誰かの影 聞きたくて 聞けなくて…」
Juliet 『モトカノ
「女子の恋愛は 塗り替えて行くから、本気で恋したら モトカレは見えない。
でもなんで? 男の子は歴代保存してて、モトカノ思い出して浸っちゃうって言うじゃん↓↓…」
ナオト・インティライミ 『タカラモノ〜この声がなくなるまで〜
「いつも僕の左側を 歩きたがるキミの右手を しっかり握りしめて離さない 離さない…」
Ms.OOJA 『Be...
「もしもこの未来にあなたがいるのなら 思い描いた景色も変わるかな…」

9月19日には、男声デュオGOLD RUSHがメジャー・デビュー。彼らは沖縄在住らしい明るい歌声と、爽快で弾むようなサウンドが特長で、この点は、キマグレン、ナオト・インティライミ、TEEなど同レーベルの先輩アーティストと同じ系統で、いずれもブレイクを果たしており、その確度はかなり高い。さらに、このメジャー・デビュー曲「宝物」は、「思うまま 歩けば 遠回りしたとしても 歩いてきた キミの道 決して無駄じゃないさ」と、夢を追う人の背中をそっと押してくれるようなフレーズが印象的で、彼らの陽気な歌声やサウンドがあるからこそ、よりリアルに聞き手に届くような気がする。昨今は、イベント参加券や写真集などオマケありきでCDが売れる時代と言われる。しかし、その一方で歌詞の魅力からCDがヒットしブレイクするアーティストや、そういったアーティストを多数輩出する為に言葉を大切にするレーベルが存在することが分かった。今後も、歌詞やメロディーなど、音楽ありきで市場全体が活性化することを大いに期待したい。


発売日:2012-09-19
商品番号:UMCK-5400
ユニバーサル シグマ

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  (音楽チャートアナリスト・つのはず誠)