先日、歌ネットで初めて“2000年以前の楽曲”が、ミリオンリリックとして歴代人気曲に認定されました。DREAMS COME TRUEの「未来予想図II」です!ドリカムは昨年、ベストアルバム『私のドリカム』がミリオンヒット。また、4年に一度開催される<史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND>も大成功!さらに2016年は、ウラベストアルバム『私だけのドリカム』をリリースし、オリコン首位獲得。9月からはウラベストを引っさげての全国ライブ<裏ドリワンダーランド>がスタートします。そのプロモーションにより、若いリスナーも様々なところでドリカム楽曲を耳にする機会が増えたため、名曲の注目度が再燃し、歌詞アクセス100万回突破へと繋がったようです。

 ところでみなさんは、この楽曲の魅力とは何だと思いますか?
“普遍的な愛のメッセージ”が込められているサビは、とても【共感力】が高いですよね。しかし、Aメロは<卒業してから もう3度目の春>というフレーズから始まり、歌の物語設定がかなり具体的。そしてBメロでは<ブレーキランプ 5回点滅 ア・イ・シ・テ・ル のサイン>という有名なキラーフレーズが登場します。「未来予想図II」が誕生する前に、歌詞とまったく同じ経験をしたことがあるという方は、ほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか…。

 つまり「未来予想図II」は、リスナーの想像力をかきたてる楽曲なんです。また、描かれている物語に魅了されて実際に<ブレーキランプ 5回点滅>をやってみたという方も少なくありません。自分の“未体験ゾーン”をくすぐられると、やっぱり実際に「体験してみたい!」という気持ちも湧いてきますよね!そういえば、往年の名曲は同様に“自分の知らない景色”を見せてくれるような楽曲が多いような気がしませんか? 歌詞中の物語背景設定(場所・天気・季節・時間・アイテムなど)が細かいため、気持ちだけでなく【五感的・疑似体験】ができるのです。

「天体観測」/BUMP OF CHICKEN (2001年発売)
午前二時 フミキリに 望遠鏡を担いでった
ベルトに結んだラジオ 雨は降らないらしい
二分後に君が来た 大袈裟な荷物しょって来た
始めようか 天体観測 ほうき星を探して
「なごり雪」/イルカ (1975年発売)
汽車を待つ君の横で ぼくは時計を気にしてる
季節はずれの雪が降ってる
「東京で見る雪はこれが最後ね」と
さみしそうに 君がつぶやく
「いつかのメリークリスマス」/B'z (1992年発売)
ゆっくりと12月のあかりが灯りはじめ
慌ただしく踊る街を誰もが好きになる
僕は走り 閉店まぎわ 君の欲しがった椅子を買った
荷物抱え 電車のなか ひとりで幸せだった
 では近年、10代〜20代から人気の楽曲はどうでしょうか。下記で、最近の歴代人気曲に注目してみました。比較しやすいよう、サビではないフレーズをピックアップ。これまでの特集で何度か述べてきましたが、今ヒット曲に最も欠かせないものは【共感力】=【あるある力】です。そのため最近の歌詞は、より多くの人の“実体験”に当てはまるというところに重点を置いているのでしょう。これは“未体験ゾーン”をくすぐる往年の名曲とは対照的であるように思えます。

  しかし実際のところ、最近のヒット曲に描かれているような“恋心”を多くのリスナーが本当に、今この現実で感じているかというと、それは違うような気がします。あくまで【あるある】なんです。そういう意味では【五感的・疑似体験】ではなく、【心理的・疑似体験】ができる歌詞であると言えるのではないでしょうか。物語の背景を細かく設定しないことで、わかりやすくシンプルに“恋する気持ち”や“胸キュン感”を体験させてくれるのです。好きな人がいなくても「恋した〜い!」という気持ちにさせてくれる。それが最新ラブソングの魅力!
「トリセツ」/西野カナ (2015年発売)
意外と一輪の花にもキュンとします。
何でも無い日の ちょっとしたプレゼントが効果的です。
センスは大事。 でも短くても下手でも 手紙が一番嬉しいものよ。
もしも涙に濡れてしまったら
優しく拭き取って ギュッと強く抱きしめて
あなたにしか直せないから。
「ナツコイ」/井上苑子 (2016年発売)
ふたりだけでいる時間なのに
緊張ばかりで話せないんです
同じ夏は二度と来ないから
このチャンスを逃しちゃいけないんだろう
不安とか正直あるけど あの笑顔に勝てっこないのです
「Overflows〜言葉にできなくて〜」
     /ナオト・インティライミ (2016年発売)
あきれるくらい何度も打ち直したメール 送れないまま
言葉にしなくても
君と手をつなぐだけで まっすぐに届かないかな
愛してる でもなかなか 言葉にできなくて
 物語性が強く【五感的】な不朽の名曲、多くの共感を呼ぶ【心理的】な最新ヒット曲、方法は違いますが、どちらも歌によって恋の“疑似体験”をさせてくれるという点では共通しているんですね!
今、恋をしている人も、そうでない人も、時には五感で、時には心で音楽を楽しんでみてください♪