舟宿にて…

かもめになれたら いいだろな
飛んで行けるわ あの海へ
ねずみ色した 晩秋の
旅路の街に 雪が舞う
舟宿のストーブに張りついてのんだ濁り酒
酔う程恋しくて 廻す電話に
やさしく絡む 海鳴りが

女の口から 言えないわ
抱いていいわと 言えないわ
恋は傷跡 残しても
涙がそっと 消してゆく
舟宿の番傘をかたむける港船が着く
あなたを探したら 雪のすだれに
あの日の顔が 見えますか

舟宿に逢いに来るかもめには 後で伝えてね
かもめになれなくて 帰りましたと
お目目の赤い すずめより
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