推理小説(ミステリー)

グラスで氷が カラカラ音たてた
あなたは静かに 眼をそらした
暁闇色の イヴニングドレス
肩口を転げ落ちる ため息

あなたの最后の 不在証明が崩れて
指先の煙草を震わせる
ベージュのカーテンが 風をはらんで
時計が音を刻んで 刻んで

つまり僕たちの 推理小説
答を僕が先に読んだ
これから後 過ごす時間は
僕にはただ 苦痛なだけ
すなわち今夜で さよなら

誰かが忘れた ライターの炎を
あなたは静かに みつめている
かすかに流れる クロイツェルソナタ
とても優しい 優しい裏切り

それでも最后に 笑ってみせたのは
想い出の為の心づくし
夜風に揺らめく イヴニングドレス
やわからな嘘 包んでかくして

ひとつ分からない事は
この愛どちらの吸い殻
あなたが僕を 僕があなたを
どちらが先に捨てたのか
それでも今夜で さよなら
推理小説
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