博物館

ひとつ目の部屋には 手首の傷が置いてある
若い頃に失くした 愛の形見として

ふたつ目の部屋には 言葉を全部閉じ込めた
他人の心を いくつか殺した償いに

涙の数だけ 部屋を増やして
怒りの数だけ ドアを叩いて

流れゆく時のほとりで
哀しみ数え乍ら

思い出にするには 余りに重すぎるものや
忘れ去ってゆく程に 軽くもないものたち

みっつ目の部屋には 失くした人の面影を
美術館のように 静かに並べてある

よっつ目の部屋からは 明るい色で重ねたい
あざなう縄の様に 幸せちりばめたい

らせん階段昇り続けて
喜び悲しみ まわりつづけて

流れゆく時のほとりで
せめて上を向いて

そして最后の部屋は お前の為にあけてある
寂しいばかりでない 人生生きた証に
生きた証に
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