黄昏-ロンドン・デリー・エアー-

黄昏の中 風が吹き抜けてゆく
佇む老人の体の中を 想い出が通りすぎてゆく
憎しみあった人との悲しみにみちた別離
涙流し抱きあった恋人の肌のぬくもり
愛すべき人とのかけがえのない食卓の風景
憧憬にみちた旅のさ中に 立ちつくした挫折の夜
歓びの涙と傷心の涙に彩られた
青春の日々は 行きて帰らず

悠久の時間の流れの中を
さまよう木の葉のように

人は時代にもてあそばれながら
絶望と悲しみの中で涙にくれる
されど人は木の葉にあらず
絶望と悲しみの涙の中で 絶えることなく
ささやかな光をみつめている
その光ある限り想いは消えず
その想いある限り人は木の葉にあらず

人は皆泣き乍らこの世に“生”をうけ
そして美しい涙とともに黄昏に還ってゆく
黄昏の中 老人が見ている景色は
すべてが美しく 輝いている……
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