時計

最後まで僕が見送れば 約束をきっと守れない
そういって君は時計を見た
空港のロビーの時計たちは 少し進んでいるようねと
つぶやいて また時計を見た

あいつと君とのハネムーン
仲間たちに囲まれて
笑顔で輝きなさい それが約束だったね

時は流れてゆく こんな場面まさか
来るなんて思いもしない そんな頃があったね

芝居じみた君の笑顔と みんなの弾ける笑い声が
ロビーに時折響く
花束を僕に投げてよこして 仲間たちがどっと笑った
不思議だね 僕もちゃんと笑えた

ガラスの向こうで君は
僕の姿をみつめた
口元が動いたけれど 僕には読み取れなかった

時は流れてゆく 後ろ姿がゆく
二人とも最後まで 約束を守った

携帯電話が鳴った
僕はふと時計を見た
君はまだサテライトあたり 電話は鳴り続けた

時は流れてゆく 別の町へ向かう
飛行機が滑走路へ 今 動き始めた
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