戦友会

櫛の歯が欠けるように 仲間が減ってゆく
戦友会に出掛けた夜 おやじが呟いた
学舎でなく古の戦の友が集う
年に一度の 思えばなんて儚い祭りだろう
誰もがいつか 年老いてゆくけれど
何とも俺達の風情は
他人に玉手箱 開けられてしまった
青春の浦島たちのようだ
生命懸けておまえ達を 守ったと言わせてやれ
それを正義と言うつもりはないが 時代と片付けたくもない

今の青春を羨ましくなくもないが 替わろうかと言われても断るだろう
不幸な時代の若者たちはそれでも青春を確かに見たのだ
銃弾に倒れた友の顔を 忘れることなど出来ない
あいつの分もあいつの分もと 生きる思いは解るまい
いつかは消えゆく 集いなのだ
冬の名残の雪なのだ
そして必ず 二度と必ず
降ってはならない雪なのだ
穏やかにそう言った後 息子の僕をサカナに
珍しくおやじは家で酒を呑んで その日は早くつぶれた

雪が降る今日もどこかで 誰かが凍えてる
遠くでバイクの走り去る 青春が聞こえた
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