邂逅

父が私を許さなかったのか
私が父を拒んでしまったのか
彼はついに孫の顔も見ずに
三年前に世を去った
今となれば果たして人の世に
生命を懸けていさかい合う程の
憎しみなどあろうはずもないと
今更に気付く愚かしさ
形見といえば古くさい
写真機が一台あるばかり
無趣味の人のなぐさみに
何を写していたのやら
無骨な指で不器用に
シャッターを切ったのだろうか
ふと気付けば撮りかけの
フィルムが入ったままだった

父のフィルムの残り半分を
私が引き継ぐことにした
少し悩んでやはり最初には
こっそりと母を撮った
それから彼の孫の姿を撮り
最后に母が私達を撮り
出来上がったそのフィルムが
今 私の前にある
父は最初に庭を撮っており
次に道端の花を撮り
そして最后は多分こっそりと
母の姿を写してた
ネガフィルムに隣り合わせて
二人の写した母がいる
初めて父とめぐり逢った
涙が止まらなかった

涙が止まらなかった
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