回帰線

絵ハガキのように美しい
この街並(まち)の裏にひそむ
恐ろしく低いうめき声が
となりのマドからもれる
ひとつドアの向う側で
女がなぐられ倒れる音
子供がナイフをみつめてる
しかる親さえ殺されて
夜と
昼とじゃ
まるで
人がちがう
何がおきても
何もないフリを
何を聞いても
何も見ないフリを
揺れる俺と
消えてゆく出来事

雪のような白いノートに
君の裸体を書き込む
美しく卑猥ならせんを描き
かなわぬ想いをぶつける
ひとつ社会の屋根の下で
口をきくのもいやなのに
外ヅラだけはおしゃれして
同じテーブルの席に着く
夜と
昼とじゃ
まるで
人がちがう
何がおきても
何もないフリを
何を聞いても
何も見ないフリを
揺れる君と
またここへまい戻る
×