ひとりしずか

山深く 木々にかくれて
独り咲き 独り散る 花のためいき
恋を知り 恋に泣く 乙女にも似て
その名淋しき ひとりしずか

細き道 山のふもと路(じ)
誰れに咲き 誰れに散る 花の一片(ひとひら)
日蔭花 哀しみの 涙にも似て
雨にくずれる ひとりしずか

露の夜に 露のいのちを
賭けて咲く 賭けて散る 花の空しさ
春は去り 人の世の 別れにも似て
ひとり消えゆく ひとりしずか
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