送り酒

しっかり見ておけ親父の顔を
しっかり聞いとけ 母の声で
今日はめでたい 男の門出
涙かくして 出世を祈る
浜の女房の あゝ 送り酒

おまえお立ちか お名残り惜しや
はやり風邪(かぜ)など ひかぬように

三月(みつき)も添えずに 離れて暮らす
新妻かもめは 切ないね
海が結んだ 契(ちぎ)りだけど
どんな魚の 大漁よりも
私しゃあんたの あゝ 無事かよい

しっかり見ておけ 故郷の山を
しっかり抱いとけ 妻(わし)の手を
空(あ)けて返せと 差す盃を
乾(ほ)せば 霧笛が 別れを告げる
浜番屋の あゝ 送り酒
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