春雷のあとで

時は五月 花咲く街角
浮かれて流れる 車の河
夏を告げる 気まぐれ五月雨
急ぎ足人は雨を避けながら
稲妻駆け抜ける 夕暮れの空に
耳をふさいだ 貴方の肩越しに
濡れた指先 手に露草
時は五月 夏はすぐそこに

時は九月 色づく街角
冬の訪れ知らせる風たち
いつだって貴方は何も話してくれないまま
私を置き去りに歩き始めてゆく
何かを求めゆく終りへの旅は
それに気付いていた本当よ私は
悲しいくらいにやさしいはずの貴方
時は九月 いつしか落葉時

時は五月 夢去りし街角
変わらぬ景色に行きかう人波
悲しい目をした人間ばかりが
ぬくもり求めてすれちがう中
疲れすぎた足 傷ついた心
どこへもやりばのないむなしさよ
せめたりしないわ 貴方のことは
求めたりしないわ 小さななぐさめなんて
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