春雨道中

そう 何もかも忘れてしまえばいい
住み慣れた部屋を飛び出す
次に訪れる場所で
心のドアを叩くのは誰だろう

気が付いてみれば
花瓶の花も枯れていた
いつだって同じさ
夢が記憶に変わるだけ

いつからか 時計の針の音が
気になり出していたんだ
次に訪れる季節に
電話のベルを鳴らすのは誰だろう

煙草に火をつけて
“今”を思いきり吸い込む
仄かに灯が点る この冷えた体にも

そう 何もかも忘れてしまったら
明かりを消して家を出た
冬は流れて いつか
暖かい雨を飽きる程浴びるのさ

珈琲茶碗(コーヒー・カップ)に溢れる程
愛し合う 誰かを

風にまかせて 漂う
春雨道中 すべてを忘れるだけ
そして 暖かい雨を
まだ知らない君のもとへ
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