出世前

浮世峠の 吹雪の中で
若い木の芽も 春仕度
苗で終わるか ひのきに成れるか
いまが大事な 出世前
つもるがまんが 花を呼ぶ

負けて崩れて また積みあげる
寄木細工の この命
たった一つの 親父の形見を
無駄にするなと 百舌が啼く
街の谷間に 星がふる

義理と人情が ひっぱり合って
俺を八つ裂き 七つ裂き
恋を捨てるか 男を捨てるか
問答無用の 出世前
投げた涙が 明日を呼ぶ
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