九段の母

母さん元気で さよならと
笑って行った 愛し子は
雲の墓標と 散ったけど
されど泣くまい 靖国の
母と呼ばれる 身じゃものを

上野駅から 九段まで
勝手知らない じれったさ
杖を頼りに 一日がかり
伜来たぞや 逢いに来た

空をつくよな 大鳥居
こんな立派な 御社(おやしろ)に
神と祀られ 勿体なさに
母は泣けます 嬉しさに

両手掌(あ)わせて ひざまづき
拝むはずみの お念仏
ハッと気付いて うろたえました
伜許せよ 田舎者

鳶が鷹の子 うんだよで
いまじゃ果報が 身にあまる
金鵄勲章(きんしくんしょう)が みせたいばかり
逢いに来たぞや 九段坂
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