わかれ宿

風にその身を 震わせながら
泣いて散る散る 恋紅葉(こいもみじ)
これが最後の 逢瀬(おうせ)なら
抱いて下さい 折れるほど
今宵(こよい)限りに 溺(おぼ)れてみても
明日は他人の わかれ宿

季節外れの 一軒宿は
他にたずねる 人もない
揺れるランプの 灯(ひ)に浮かぶ
やせたあなたの 横顔に
同じ悩みを 初めて知った
名残(なご)り切ない わかれ宿

惚れて添(そ)えない 二人の仲を
何でのぞくか 窓の月
いっそあなたの 腕の中
命燃やして 燃え尽きて
灰になっても 悔(く)いなどないわ
旅の終りの わかれ宿
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