風の十三湊(とさみなと)

津軽恋しや――
捨てた故郷(ふるさと) 帰ってみれば
砂に埋もれた 磯舟ひとつ
風もヒュルヒュル 十三湊(とさみなと)
お父(どう)の十八番(おはこ) 砂山節が
今も聞こえてヨー 懐かしい

七里長浜――
波のうねりか 海鳴り哭(な)いて
胸で詫(わ)びてる 不孝の数を
風もヒュルヒュル 十三湊
昔のままの 茅葺(かやぶ)き屋根を
見れば目頭ヨー 熱くなる

西の空みりゃ――
遠く雪雲(ゆきぐも) 流れて飛んで
誰を待つやら 冬鳥一羽
風もヒュルヒュル 十三湊
やさしい母の 微笑む顔が
けむる焚(た)き火にヨー また浮かぶ
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