下津井情話

縁(えん)もゆかりも ない船(ふね)だって
港出(みなとで)るときゃ つらいのに
ましてあんたを 乗(の)せて行(い)く
瀬戸(せと)の小島(こじま)の 通(かよ)い船(ぶね)
涙見(なみだみ)せない 約束(やくそく)だから
かくれて桟橋(さんばし) 袖(そで)しぼる

(下津井節)
下津井港(しもついみなと)にヨー 錨(いかり)を入れりゃよー
街の行灯の 灯が招くヨー

波(なみ)のまくらで まどろみながら
しばし女(おんな)の 夢(ゆめ)をみた
三日三晩(みっかみばん)は 早(はや)すぎて
別(わか)れうず潮(しお) 霧(きり)の花(はな)
抱(だ)いておきたい 思(おも)い出(で)なのに
捨(す)てなきゃ飛(と)べない 磯千鳥(いそちどり)

酒の合間(あいま)に 下津井節を
なさけ名残(なごり)に 口(くち)うつし
扱(しご)き結(むす)んだ 格子窓(こうしまど)
見(み)える筈(はず)など ないけれど
もしも見(み)えたら わたしの胸に
汽笛(きてき)を鳴(な)らして もういちど
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