長い話

17歳の頃は 流行りに身をあずけて
クラブや朝帰りも親の知らないこと
いつも家に帰ると母は泣きながら
「そんなに家が嫌いか」と裏返った声で言った
ノートの一番最後のページに書いた
将来の夢も浅はかなものでした

18になった頃は 恋に恋をして
ままごとの様な暮らしにうぬぼれていた
2つ年上の彼は口グセのように
「そんなに家族が好きか」と分からないことを言った
財布の中身と終電が終わっても
引き止めてくる彼が好きで別れた

19歳の頃は 自分を知ることと
夢を結んでくれた歌に出会った
父は嬉しそうだった ギターで歌ってた
それまでにいない家族が増えたような気がした
三度のメシより好きかと聞かれて
画家を目指したことはお蔵入りになった

20歳になった頃は やけに悲観的で
それがいい事だと勘違いをした
歌うことがそれほど大事じゃなく思えた
何を言ってみても薄っぺらで嫌だった
ぶつかる前に人を遠ざけてた
嘘で始めた笑顔がいつのまにか染み付いた

21になった頃は 人が悲しかった
どこで覚えてきたのか やり過ごし方を知ってた
それでも涙が出る自分が好きだった
右手でふかしているタバコは消せなかった
黒い服ばかり好んで着てた
だれのようにもなりたくなかった

22になってみても それほど変わることはなく
ひとつ変わったことと言えばタバコをやめた
強く思うことはとても難しくて
今もまだ自分を信じきれずにいる

なぜ生きてるの なぜ生きてゆくの
なにもないから なにかになりたい
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