雨は泣いている

ビルの谷間に 今日も降る雨に
俺はあの娘を 思い出す
『好きだよ』と一言 云っただけで
それだけで それだけで
倖せだった あの夜の二人

青い夜霧に 深く包まれて
二人だまって 濡れて歩いた
町角のキッスも ふるえて居たよ
何故かしら 何故かしら
長い睫毛(まつげ)に 光った涙

泣いて居るよな 銀のこぬか雨
ひとり淋しく 歩くこの道
『好きだよ』と今でも つぶやけば
何処からか 何処からか
あの面影が ほほえみかける
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