北の慕情

にぎりつぶした 別れの手紙
北の涯てまで 連れてきた
白いフェリーの 丸窓に
ちぎれたはずの 恋糸が
睫毛のように こびりつく
ああ ああ 終わりなき愛は
積丹岬(しゃこたんみさき)の雨を泣かせる

どこか空似の 女が唄う
古い縁歌の すじ書きが
おれとあの娘に 似てほろり
グラスに落とす ひと滴
含めば冷たい 夜が更ける
ああ ああ あてどなき愛は
サロベツ原野に雪を降らせる

惚れていたのか こんなにまでも
深い絆を いま知った
遠くはるかに 離れても
捨てちゃいやよと 耳元で
切なくむせぶ あの声が
ああ ああ 終わりなき愛は
宗谷の岬の月をゆがめる
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