夕映えのシーン

目を閉じると浮かんで目を開けると消えてしまうものってなんだ
まぶたの裏に残った記憶が鮮明に映り出してくるんだ

駅前のバスロータリーでずっと停止していた僕ら
ようやく進みだしたんだ それぞれの行く先を選んで

最後に君はなんて言っていたの
僕は怖くて耳を塞いでたんだ
雑踏の中消えていく背中を映画のワンシーンのように眺めてた

見えないはずのため息がはっきりと白く見えるようになった
心の内側まで見透かされてしまう そんな季節が来たんだ

いつもつながっていた右手は冷たくなってポケットの中
君の左手が揺れる 枯れた空を背景に映して

最後に君はなんで泣いていたの
僕はずっと下を向いていたんだ
足元に落ちたシミが広がって行くのをぼんやり見てた

君の唇が何度か離れたりくっついたりする
まぶたの裏のフィルムが回りすぎて焼き付いてきそうだ

最後に君はなんて言っていたの
僕は怖くて耳を塞いでたんだ
雑踏の中消えていく背中はまるで映画のワンシーンのように

あのとき君は泣いてたはずなのに
笑った顔が映り込んでくる
僕の中消えない記憶が目を閉じると浮かんでくるんだ
×