港のちぎれ雲

ふるさとを聞くな 生まれも育ちも
かもめで飛んで 出船で去って
片手であばよ―――
港の秋雲 ちぎれ雲
それがいまの俺
一度惚れたら その女性(ひと)の
幸せだけを ただ祈る

想い出を聞くな 好きじゃないんだ
ふりむきゃ一つ 教えて三つ
傷あとばかり―――
夕焼け夢雲 はぐれ雲
気ままで身まま
言葉少なく 頷いて
離した指が 熱かった

行く先を聞くな 泪は苦手だ
汽笛が吠えて 桟橋(さんばし)揺れて
別離(わかれ)が残る―――
月夜の旅雲 迷い雲
影だけ連れて
たったひとつの 手荷物は
情で結んだ 契り花
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