ちえこ

私知ってる あのひと飽きたこと
払った指が 凍ってた…
昔、母から 何度も教わった
男の指は 胸の温度と…
せめてレモンを がりりと噛んで ちえこ
貴女(あなた)みたいに 無邪気に死んで行けたら――
愛しても 愛しても 愛に遭(あ)えずに
ほろ苦い 水の環(わ)が 今日もひとつ広がる
安達太良(あだたら)の空のない 東京
窓に傾く 陽(ひ)も 陽も昏(くら)い

次の人こそ 宿命(さだめ)に違いない
ねんねんころり そうだよね…
人間(ひと)の運など 血液型(ち)だとか星座(ほし)だけで
決まっていると 信じたくない…
私、もうじき 壊れてしまう ちえこ
いのち温(ぬく)める マッチを売ってください――
特別な ことなんか 何もいらない
どこにでも ありそうな そんな夢がどうして
まごころは異邦人 東京
鍵を下ろした 男(ひと) 男ばかり

愛しても 愛しても 愛に遭えずに
ほろ苦い 水の環(わ)が 今日もひとつ広がる
阿武隈(あぶくま)の川もない 東京
いいわ流れる 恋 恋まかせ……
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