われは海の子

我(われ)は海の子白波(しらなみ)の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家(すみか)なれ

生まれてしおに浴(ゆあみ)して
浪(なみ)を子守の歌と聞き
千里寄せくる海の気を
吸いてわらべとなりにけり

高く鼻つくいその香(か)に
不断(ふだん)の花のかおりあり
なぎさの松に吹く風を
いみじき楽(がく)と我は聞く

丈余(じょうよ)のろかい操(あやつ)りて
行手(ゆくて)定めぬ浪まくら
百尋千尋(ももひろちひろ)海の底
遊びなれたる庭広し

幾年(いくとせ)ここにきたえたる
鉄より堅きかいなあり
吹く塩風に黒みたる
はだは赤銅(しゃくどう)さながらに

浪にただよう氷山も
来(きた)らば来れ恐れんや
海まき上ぐるたつまきも
起(おこ)らば起れ驚かじ

いで大船(おおぶね)を乗出して
我は拾わん海の富
いで軍艦に乗組みて
我は護(まも)らん海の国
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