伊根の舟屋

壁の日めくり 一枚破り
宿の窓辺で 鶴を折る
泣きに来た 伊根の舟屋は 波まくら・・・・・
海が玄関(おもて)よ 通りは裏口(うら)よ
そんな哀しい 恋だから

三日三晩の 東風(いちせ)もやんで
沖は夕なぎ イカ日和
絵のような 伊根の舟屋の 月灯り・・・・・
ふたつぐい呑み 並べてみても
ひとりぼっちは 淋しくて

旅のおわりの 浮棧橋に
咲いて春待つ 口紅水仙(せっちゅうか)
ふりむけば 伊根の舟屋は 雪の中・・・・・
生きる寒さに 負けそな時は
泣きにおいでと 呼ぶように
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