蝉しぐれ

おまえのいない台所 点る灯り
いつもふたりで 過ごした夕暮れ
おまえが入院してから ふた月が過ぎ
明日(あした)ようやく 戻れる我が家に
気丈(きじょう)に生きてた つもりでも
焼きめしひとつも 作れない

窓を開ければ 蝉しぐれ
見過ごしてきた おまえの人生
胸に染みるよ 蝉しぐれ
ほんとにごめん ほんとにごめん 振り向きもせず

元気でいればそれでいい そばにいれば
明日(あした)急いで 迎えに行くから
あの日のままに置き去りの キルトの刺繍(ししゅう)
じっとおまえの帰りを 待ってる
この歳になって やっと今
気付いたおまえの ありがたさ

旅に行こうか ふたりして
落ち着いたなら 温泉宿でも
そんな事さえ してやれず
過ごしてきたと 過ごしてきたと 今更思う

窓を開ければ 蝉しぐれ
見過ごしてきた おまえの人生
胸に染みるよ 蝉しぐれ
ほんとにごめん ほんとにごめん 振り向きもせず
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