ブルー・コーヒー

時は16世紀 ここはイタリア ローマ
燃え上がるルネッサンスの胎動
情熱が石を砕き 情念がキャンバスを汚した

とある火曜日 21世紀の昼下がり
路地裏にある 時代屋の喫茶店
テーブルの上にあった 「近代ヨーロッパ美術展」のチラシ

ヘイ!マスター コーヒーをもう一杯 僕に
ミケランジェロをブラックで

ごらん 霧に煙る蒼い山脈
雑誌の広告の一枚の写真
こんな所に行けたらいいね 自転車で行けたらいいね

ヘイ!マスター コーヒーくれないか 僕に
ブルー・マウンテンバイクを一杯

あの娘がテニス部で僕がマンダリン部
琥珀色に焼けた肌 輝きはまるでモカ
そこに青春があって 香り立つ愛情があった

光陰は矢の如く 20年後のサンセット
この街のどこかに彼女がいるという
ここに人生があって 失くした未来がある

ヘイ!マスター コーヒーをもう一杯 彼女に
ヘイ!モカ! エースを狙え!

あまいミルク・コーヒー
苦いブラック・コーヒー
そして僕はいつでも、、、、
窓辺に椅子を置いて
タバコに火をつけて
ちょっとせつないブルー・コーヒー
×