狐塚

紅い鼻緒 千切れて
千里向こうの山颪(やまおろし)
逢う魔が時 影法師
朽ち葉舞いて冬近し

彩なす灯が宵を迎へ
儚き蝋は野に消ゆ

いづれ皆散るが定めならば
母は誰を憎めばいいのですか
裂くのならばいっそ わたくしめも
揺れる南天の実がまたひとつ

降りし雨が雪となりても
「今来む」と言へずに

嘆かわしきかな 乱世の魂(たま)
思へど想へども 摘み取られ
焦がれ悲しめど涙は出ぬ
掛けた画(おもて)の下 泣いています

笹舟よ 愛し子何処(いづこ)へ去(い)ぬる
我が手に抱けずに ああ 幾年(いくとせ)…
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