逢瀬の花

「男は引きずる 昔のことを…」
「女は忘れる 昔のことと…」
それが世間の たとえでも
今宵一夜(ひとよ)の 逢瀬の花は
燃えて一輪 紅ひと色に
日ごと身体(からだ)に 咲き誇ります

この手も真白く なるほど抱いた
強気なあなたの あの日の涙
心あなたと 通わせた
花の歳月(としつき) 私のものと
派手に泣かせて 一生分を
ひとり上手に 送ったあとは

霧降るあとから 樹雨(きさめ)に変わる
木(こ)の葉の音まで 女の吐息
その身案じて いるのです
むしろこれから 別れてからよ
つづきますとも ふたりの縁(えにし)
この世ばかりか 次の世までも
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