戻り梅雨

忘れるつもりで 来たはずなのに
なんで選んだ 同じ宿
揃い浴衣が
一つ余った 乱れ籠(かご)
窓の外には 心のように
またも愚図(ぐず)つく 戻り梅雨

あなたと別れて 日が経つものを
思い切れない 意気地なし
憎い面影
見せて泣かせる 宿鏡
呑めぬくせして 頼んだお酒
やはり手付かず 燗冷まし

二人の思い出 このまま残し
一人身軽で 発つつもり
みれん涙を
洗う湯舟は 掛け流し
長い雨でも 降るだけ降れば
いまに止むはず 戻り梅雨
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