18インチの罠

かわいい瞳をした少女がひとり
造花のバラに水をやっている
17の春の荷造りを終え
都会に歌を捜しに来たという

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢が そこにひとつだけあった

出会いはいつも甘い蜜の味
差し出されるもの全てが輝いていた
右も左もわからぬまま
ほほえんでいられれば それでよかった

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢に うそなどないんだと信じてた

悲しい過去をひきずっていても
ガラスの靴でシンデレラにもなれたし
12時過ぎても 自由はなかったけど
白いドレスでお姫様にもなれた

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢に まばたきするひまもなかった

365日が1秒で
月日はいつしか燃えつきてしまってた
ある夜うしろを振り返ってみたら
からっぽの星くず つかみかけてた

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢を初めて 心に問いかけた

正直な自分を取り戻そうと
勇気をふるって叫んでみたけれど
よどんだ流れのまっただ中じゃ
どこへも声は 届かなかった

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢は闇の中へ沈もうとしていた

耳をふさげ 口を閉ざせ その瞳つむれと
そんなはりめぐらされた罠に落ちる前に
初めて自分の言葉を持って
心の傷口 つくろい直した

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢に 安らぎなどひとつもなかった

夢を唄っていたいだけだったのに
夢を唄えぬ日々が多すぎた
かわいい嘘もつけないからこそ
大きな嘘を信じすぎた

しあわせですか ねえしあわせですか
うたかたの夢に 静かに幕をおろした

かわいい瞳をした少女がひとり
咲いたばかりのバラに水をやる
明日からは いついつまでも
こもれ陽の中で眠ればいいさ

しあわせですか ねえしあわせですか
確かな夢が ここにひとつだけあった

しあわせですか ねえしあわせですか
確かな夢が ここにひとつだけあった

確かな夢が ここにひとつだけあった
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