菜の花畑でつかまえて

年上の女だった 少年の恋だった
菜の花畑で待っていた 故郷の春だった
おぼろ月 うるんだ夜風
黄八丈(きはちじょう) 伽羅(きゃら)の香り

どんなに強く 抱きしめても
心は笑って 逃げてった
花のむこうへ 吐息のむこうへ

あの女が嫁ぐ日に 故郷に背を向けた
菜の花畑に日が落ちる 夕映えの中だった
濡れた頬 上りの列車
ついて来る 伽羅(きゃら)の香り

ひと駅ごとに 大人になる
そんな都会への つらい旅
汽笛は挽歌 青春の挽歌

菜の花もない街で ありふれた恋も知り
それでも春にはぼくを呼ぶ
黄金色(きんいろ)の追憶が

あの夜に 似たおぼろ月
幻の 伽羅(きゃら)の香り
きっと今でも 来ない女を
菜の花畑で 待っている
あの日のぼくが 少年のぼくが
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