冬の香り

吾木香の花が
揺れてる細い阪道
吸い込まれるほどに
澄んだ空が 滲むのはなぜ

千切れてく明日を
繕うだけの絆に
君は疲れて
帰らない 鳥になった

ふたりが待ちわびていた
冬の香りが ただ冷たい

手をつないだ
ふたつの影が
無口なままでまた消え去った

目をつむって
あとどれくらい
君とのキスを 君との約束を
忘れられたなら
思い出になるの?

遠くなる背中を
読みかけの本で隠した
走るバスを止めて
まだ好きだと
言えたらよかった

君の胸で嗅いでいた
冬の香りが まだ消えない

手をつないで
歩いた日々が
色を無くしたまま風に舞う

息をとめて
あとどれくらい
君との朝を 君と見たすべてを
忘れられたなら
思い出になるの?

今も憶えている
ふたり出逢ったあの日

手をつないだ
ふたつの影が
無口なままでまた消え去った

さよならをあとどれくらい
繰り返したなら 君を重ねたなら
すべて忘れたなら
思い出になるの?
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