ありがとうという名の少年

ありがとうという名の少年はいつも
ありがとうだけしか言わずに過ごした

苦手なひとにも大事なひとにも
ありがとうだけしか言わずに過ごした

やさしくしたときも
されたときでも
傷つけられたときも
どんなときでも

ある日 少年は出会う
きれいな瞳をした少女に
胸が張り裂けるほど
高鳴る気持ちのなかで

ありがとうと言った
何度も

ありふれた恋のありふれた日々を
ありがとうだけしか言わずに過ごした

それでも想うほどに
こころは軋んで
初めて違う言葉を
口にしてしまう

「君が好き」と言ってから
少年は言い慣れたありがとうを
なぜか言えなくなって
恋はこわれていった

「君が好き」と言ってから
少年はもう二度とありがとうを
なぜか言えなくなって
愛に迷い始めた

ありがとうと言った
ありがとうと言った
ありがとうと言ってた
何度も
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