カッコウ・ホテル

ホテルの名入りの便箋に「ごめんなさい」と書きかけて
後(あと)の言葉が浮かばずに テラスを眺めてる…
湖畔の霧もいつか晴れ 今鳴く鳥はカッコウかしら…
深煎(い)りのコーヒーと 人影疎(まば)らなロッジのロビー
一緒にここへ 来たかった…
どんなに説明してみても あなたは解らない
女が独り 旅した理由(わけ)は 男のあなたには…
もうよしましょう 探り合うのは
見えない傷を つけ合うのは
2、3日したら 山を下(お)り
私は私を 歩き出す

あなたの心に住んでいる 女(ひと)が誰だか知りながら
明日(あす)は忘れてくれるかと ともかく耐えてみた…
湖畔の森の小枝から 見知らぬ枝へカッコウ翔(と)んだ…
忘れてた青い空 出窓のパンジー、くすぐる微風(かぜ)が
疲れた胸も 撫でて行く…
車に忘れた携帯の アドレス、手がかりに
狼狽(うろた)えながら 次から次へ 行方を訊(き)く男(ひと)よ…
もうよしましょう 無駄な暮らしは
幸せ芝居 続けるのは
身勝手なやつと 呼ばれても
私は私と いう女

もうよしましょう 探り合うのは
見えない傷を つけ合うのは
カッコウの歌に 送られて
私は私を 歩き出す……
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