つまさき金魚

親指のさきっちょに 真っ赤な金魚泳がせた
結い髪のうなじにも気を配って どこから見ても可愛い私

あなただけに あなただけに見て欲しい

下駄とサンダルの音 言葉隠す二重奏 そっちばっか向いてるね
「早く早く!」追い抜いてゆくはしゃぎ声

あなただけを あなただけを見てるのに

色とりどりの浴衣 目に染みる煙
火薬匂いが二人を包んだ
つまさきばかりを見て
消えてなくなりそうな私の目の前に今 大輪の花

振り向きたい どんな顔で空見上げてるの
伝えたい あなたのことが 好きで好きで好きで

打ち上がって 水面に落ちる 言えるはずのない想い
叫びたい あなたのことが 好きよ好きよ好きよ

耳の奥にはまだ 音が鳴って止みやしない
親指の金魚を綺麗に消して 私の夏が終わっていく

あなたのこと あなたのこと 嫌いになれますように
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