この世が終る時(When the world ends)

例えば明日にも この世が終るなら
三通の手紙だけは せめて残しておきたい

一通は私を育ててくれた父母に
ありきたりだけれど“ありがとうございました”と
それだけを何度も書きたい

色あせた写真を見つめながら
語り続けた夜と
幾度か見た二人のやさしい涙の為にも
命終る時まで 誇りを持ち続けたい
私はまぎれもなく 貴方達の息子であったことを

二通目の手紙は かけがえのない友達に
ありきたりだけれど“ありがとうございました”と
追伸に一度だけ書きたい

今にして思えば 楽しいばかりの学生だった
目を閉じて想い返す いくつかの場面には
あの頃の友達の笑顔

陽に焼けて 誇りにまみれながら
走りつづけた道を
振り返りながら前を行く 君だから君だから今日まで

信じつづけたことを誇りに思っていたい
君が側にいてくれた青春だったからこそ
輝いた日々を過ごせた

最後の手紙には 宛名さえ書かずに
使いなれた便箋に 黒いインクで“サヨナラ”と
たった一言書きたい

いつもの夜のように いつもの酒を飲み
いつもの椅子で いつものように
静かに過ごしていたい

やがて風は止まり 星さえも炎に包まれ 降り始める
この世が終る時 世界のどこかで 鐘が鳴るだろう

私は 愛するおまえの肩を抱き
想い出のあの街角で 静かにその時を迎える

おまえを抱きしめながら

静かに命を終る………
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