異邦人

今更アルバムなんて 欲しくはないけれど
それがあなたのひとつだけの 形見となれば別だわ
だからこうして ホラ この街を久し振りにたずねた
過ごしたアパルトマンは マロニエ通りの奥
洗濯物の万国旗や 雨晒しの自転車
タイムマシンで ホラ 戻った様に 何もかも或の日のまま
シミだらけの見慣れた壁をたどり
懐しい手摺をたどり 夢をたぐり 今日はひとり
確かめるのは 本当の おわり

狭いドアをあければ 涙を拭いもせず
あなたにすがる可愛い人 あなたの最後の人
そうよこうして ホラ 泣いてくれる人は他にもある
あなたのお友達は 私を見上げると
あからさまに顔曇らせて 黙って目を伏せる
私一人が ホラ 異邦人 何もかも或の日のまま
薄暗い階段を降りる 足元がかすかにうるむ
太陽が まぶしいから……
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