ひと月遅れの春の風は 香り高く届いてるだろうか
以前の例えは気にしていないが 意味があるとも思ってはいない
おきまりの時間に吹いたそれよりも いくらか余韻が残ればいい
さして強くもなく、弱くもなく そう温くもなく冷たくもなく
絶え間なくただ、ただ、続けていく 壁の向こうの季節に向けて
今更ながら言っておくが この街を出るのを止めにしたからだ

相変わらずの肩すかしなのか 季節は退屈そうな色をする
素晴らしい秘密をばらさぬよう ますます風は意味を辿る
欠伸につられて鳴り響く 壁の向こうから運ばれる音を
風の便りとかぎつけて ギリギリのところで聴いている
木々が揺れる速度はゆっくりだが 確かに緑は深まっている
自然が自然と振る舞うように 期待に応えて移り変わる

遊び半分に吹く風には 暑さが増すのはどうでもいい
戯れの時だけ大いに暴れ 雨の中、大いにはしゃぎまくる
季節がそっぽを向いていないのは 木々のざわめきで判っている
景色が変わって欲しいのならば 本当に暑さが欲しいのならば
今すぐ壁を壊して、そして 夏が来る前に吹いて終わるよ
何故なら汗なら拭うだけで 済んでしまうだけだからさ

君にちょっと伝えたいだけなのさ
ありふれた素晴らしい風の中
君にちょっと伝えたい風なのさ
ありふれた素晴らしい訳だから
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