夫婦松

雪をかぶった 松の木は
惚れたあんたの 艶姿
裸一貫 つらぬく道を
飾り通すも 女のつとめ
夢の都さ この都会は
いのち捨て身でついてゆく

春は暦の 上だけで
寒さ身を切る 松の開け
生れ故郷の駿河を棄てて
人生を誓ったふたりじゃないか
熱い情けを 荒海の胸に
燃やして 仰ぐ空

あんた空貫く 松ならば
わたし寄り添う鶴になる
涙ちぎって惚れ抜き通す
愛は女の 手搾り酒だ
ぐっと飲みほし 春を呼ぶ
夢も番いの 夫婦松
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