若狭の女

死ぬほど憎い あの人に
死ぬほど惚れた この身がつらい
放生(ほうぜ)祭りで 慣れ染めあって
情とかした 鮎川に…‥
燃えて散りゆく 深山の紅葉
わたし一途な 若狭の女

凍える指に 息かけて
恋文つづる 鵜の瀬の宿よ
杉の木立に カジカの声が
浅い眠りを また覚ます…‥
窓をあければ 舞い込む雪が
肌にせつない 若狭の女

しあわせなのに 泣けてくる
逢瀬の夜の 時計の速さ
月見障子を 背中でしめて
離さないでと すがりつく…‥
蘇洞門(そとも)嵐か 哭く波の花
淡く咲けない 若狭の女
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