ハムレット

「君の体が欲しいわけじゃない」
そう あの人は呟いた
「僕はいつでも誤解されてる」
そう あの人はうつむく

「せつなさが僕をくるわせ
いとしさで君を切りつけて
わかってもらえない」なんて
もう 言わないで

「どうしてそんな目で僕を見るの?」
そう あの人は囁いた
「君が愛してるのは君自身」
そう あの人はふり向く

「僕を傷つけて苦しめて
それでも試してばかりいる
本気になってくれ」なんて
もう 言わないで

「たとえば ささやかなプレゼントを
贈りたくて派手なリボンで飾れば
開ける前から 君は喜ぶわけで」
そう あの人は困ったような顔をする

「誰よりも 君のこと愛してる」
そう あの人は呟いた
「同じくらい 僕を愛せるかい?」
そう あの人はうなだれ

「裸になって君を知って
抱き合うたびに重ね着して
僕は僕 君は君」なんて
もう 言わないで

「男に生まれて本当によかった」
そう あの人は囁いた
「女に生まれて 本当によかった?」
そう あの人は尋ねる

「巡り合いなど ただの偶然
別れるために出会えるだけで
すべてが運命だ」なんて
もう 言わないで

「お互いのいやしさを隠して
どこか無理して向かい合っているから
貧しい自分を吐き出してしまいそう」
そう あの人は困ったような顔をする

「君の体が欲しいわけじゃない」
そう あの人は呟いた
「僕はいつでも誤解されてる」
そう あの人はうつむく

「せつなさが僕をくるわせ
いとしさで君を切りつけて
わかってもらえない」なんて
もう 言わないで
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