知恵の実

少年はまだ幼すぎて
知恵の実を上手く飲み込めない

季節たちは 彼を追い越して
取り残されてうずくまった

いたずらな視線が削る背中
鋭く細くなるばかり

僕の躰は鈍く光るナイフ
それでも 誰か 抱いておくれ

噎せ返るほどの金木犀
少年は少女に出遭った

「可哀想に」と抱きしめられ
「やっと見つけた」と彼は泣いた

想いを全部口にしたいのに
喘ぐばかりで声にならない

僕の喉の奥深く 揺れるリンゴ
この想いごと 剔っておくれ

僕の躰は鈍く光るナイフ
それでも 強く 抱いておくれ

想いを全部口にしたいのに
喘ぐばかりで声にならない

僕の喉の奥深く 揺れるリンゴ
腐り切れずに 困ったリンゴ

僕の躰は鈍く光るナイフ
血まみれのままで 抱いておくれ

僕の喉の奥深く 揺れるリンゴ
生まれかわる日まで 揺れるリンゴ
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