国定忠治

(台詞)
「赤城の山も今夜を限り、生れ故郷の国定の村や、縄張りを捨て、国を捨て、
可愛い子分の手前(てめえ)達とも別れ別れになる道途(かどで)だ。」

強い者だけ 大手を振って
渡る世間に 横車
押して追われて
今宵限りの 赤城山
月を浮かべた 水盃を
干して忠治の 男泣き

『たとえ義理でも 親子の縁を
切って来たのか 渡世ゆえ
さぞや辛かろ この国定を
許せ 板割り浅太郎
せめて形見の 勘坊だけは
後生大事に 抱いて行け
吹いて呉れるか 円蔵どんよ
せめて供養の 横笛を
渡る雁さえ 貰い泣き』

広く見えても 関八州は
追われ鳥には 狭い空
明日はいずこの
夢で見るやら 赤城山
すがる子分を 目顔で叱り
結ぶ忠治の 長草鞋
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