春葬

どれほど艶やかに
咲く花よりも
甘やかに散るのは
君を恋うる
私の胸の血でしょう

とじた瞼の闇まで
紅ゐに染めあげ
薄墨けむるこの世を
埋めてゆくでしょう

葬ってください
私を
春のこの日に

無垢ほど残酷な
微笑みはない
やさしい君を知る
そのたび
愛は馨しく患う

どうか
初めて出逢った
時間を絵のように
綺麗に閉じ込めたまま
思い出せる夜に

葬ってください
満開の
桜の下に

失いかけたもの
呼び戻しても
慰みの亡霊
しづかな骨
腕のなかで崩れる

君を抱きしめた刻に
帰ってゆけるなら
これから生きるすべての
日々など捨てましょう

伏せた瞼の闇まで
紅ゐに染めあげ
薄墨けむる私の
この世を浄めましょう

葬ってください
君の手で
春のこの日に
×