310

3月の10日付で ぼくは転勤して
小さな郊外の この街で暮らした
前よりもほんのちょっとだけ 広いマンションで
年齢を偽った 中くらいの女と暮らした

その女は いつもビスケットをかじっていて
毎晩ぼくに 性交を求めてきた

あぁ どうしてぼくたちは してしまうんだろう
遠くで犬がないてる いつもの犬
パイプベッドがきしんで うるさいのかなぁ

そうだ 遠いあの日 夕暮れの舗道で
ぼくらは手を握って 未来だけ見つめていた

早朝からの出勤で ぼくは疲れていて
昼の休みに 屋上で少しねむった
ふりそそぐ陽射しの中で ユメをみる
体の中に あの女が住みつくユメ

あぁ 子供の声がする 昼下がり
喉の奥で渇いてく ユメのにおい
この青空に消えてく 蜃気楼のよう…

あぁ どうしてぼくたちは 抱き合うんだろう
腰のあたりに感じる 重たい熱
あらわれては消えてゆく 蜃気楼のよう…
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