ワインの匂い

ワインの好きなその娘はいつでも
いくつもいくつもメロディーをつくって
窓から遠くを見つめながら
やさしく哀しいピアノをひいてた

別れたひとの思い出をうたにして
涙を流しては口ずさんでいた
はじめてふたりで歩いた日に
あの娘はささやいた眼をとじたまま

私はもう誰も好きに
なることもない 今は
ありがとう あなたはいいひと
もっと早くあえたら

逃げてゆく逃げてゆく倖せが
時の流れにのってあの娘から
しばらくの間この街から
離れてひとり旅にでてみるの

あの雨の日 傘の中で
大きく僕がついた
ためいきはあのひとに
きこえたかしら
×