ミヨリの森

雨が木々を愛(め)でている
風が空を駆けてゆく
“ほら、ここへ来て”

私の名を呼んでいる
目には見えぬものたちの声
満ち溢れ

波のように返す言葉は木霊(こだま)に変わる
忘れられた伽噺(おとぎばなし)を伝えてくれる

あなたのその手で私を抱擁(いだい)て
夢現(ゆめうつつ)…

深い森を彷徨(さまよ)えば
いつかそこへ辿り着く
さあ導いて

ずっと胸に秘めた想いを土へと還(かえ)す
かつて愛と言われたものをひとり弔(とむら)う

私のこの手があなたに触れた
指先に夢の跡…

森の中を生きた呪文(ことば)は木霊(こだま)に宿る
信じられたあの伝説(いいつたえ)叶えてくれる
ずっと胸を刺した痛みを光に変える
かつて詩(うた)と言われたものをひとり呟く

誰かの願いが私に届いた
耳元に夢の跡
“ここにいて”
夢現(ゆめうつつ)…
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